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BOOKS
混沌のウクライナ戦争の姿を可視化させた画期的論考!
ウクライナ戦争の正体
歴史・城
著者・編者 | 有坂純 |
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発売日 | 2023年12月21日(木) |
定価 | ¥2,420(税込) |
ページ数 | 348 |
版型 | 四六 |
ISBN/JAN | 9784651203737 |
いまだ実態が見えにくいウクライナ戦争
「なぜ、ウクライナは多くの専門家が予測したように開戦から数日間で崩壊しなかったのか?」「なぜ、国力と戦力に優るはずのロシア軍はこれほどまで「弱い」のか?」「なぜ、先進的な兵器が投入されているのに第一次大戦のような塹壕戦となっているのか?」、そして「なぜ、この戦争はいつまでも終わらないのか?」……。
2022年2月の開戦以来、ウクライナ戦争についてさまざまな疑問が呈されてきた。しかし、これらに対する答えはニュースの断片的な情報をかき集めても得られないだろう。断片はいくら集めても断片でしかないからだ。さらにはフェイクニュースや情報統制による情報の少なさも、この戦争の実態を分かりにくくしている。そして依然としてウクライナ戦争は「不可解な戦争」であり続けている。
軍事史の知見を用いてウクライナ戦争の実際の姿を立ち上がらせる
では、ウクライナ戦争に関するこうした疑問の答えはどうすれば手に入るのか。そのもっとも確実な方法は、過去から現代にいたるまでのさまざまな戦争・紛争についての研究、つまり軍事史学の知見を当てはめて考察することだ。戦争は個別具体的である反面、戦争としての共通性をもっている。そのため、古今東西の様々な戦争・紛争を扱う軍事史学の知見をウクライナ戦争に当てはめて考察すれば、戦争の背後にあるものを類推し見通すことができる。著名な軍事思想家のクラウゼヴィッツが言っているように、戦争の形はさまざまだが、人間が戦争を行っている限り、その本質は変わらないからだ。この作業を行い、ウクライナ戦争の実際の姿に迫ろうというのが本書『ウクライナ戦争の正体~軍事史から読み解く「不可解な戦争」』の狙いである。
著者はゲームデザイナーを兼業する軍事史家
著者の有坂純氏は軍事史家であると同時にコンピュータゲームのデザイナーでもあり軍事をテーマとしたゲームも作っている。実はゲームと軍事研究は切っても切れない関係にある。戦争という複雑な営為を理解し予測するには単純なモデルに落とし込んで分析する必要があり、たとえばチェスなどのボードゲームはそもそもそうした目的のために生まれたものだ。現在の軍隊で作戦や戦闘のシミュレーションにゲームが用いられているのもそのためだ。戦争や戦いの分析にはゲーム的なものの見方が求めらるのである。つまり、ゲームのデザインとは、対象としている物事をモデリングする作業でもあるのだ。
それに熟達した著者が複雑で意外な様相を見せるウクライナ戦争を捉えたらどのように説明しうるのか、それを行っているのが本書なのである。たとえば本書の第2章「「特別軍事作戦」のモデリング」ではビジネスの世界でも知られているランチェスタ・モデルを用いて、開戦と同時に始まったロシア軍の侵攻(プーチンが言うところの「特別軍事作戦」)がなぜ失敗したのかを、両軍の兵力と部隊の強さなどからわかりやすくを考察しているが、これがまさしくモデルによる戦争の分析に当たる。
開戦からもうじき3年を迎えるウクライナ戦争。混沌としてとらえどころがないように見えるが、ゲームデザイナーでもある軍事史家の書いた本書をよめば、前線で、また両軍の中枢で、どのようなことが行われているか、なぜそうなっているか、見通す視座を得ることができるだろう。