MAGAZINES

WEBSITES

さまざまな企業のSDGs活動

株式会社クラスさま

「捨てる」をなくし「循環」を生むサブスクリプション。暮らしの新しい“文化”を創造するCLASの挑戦

株式会社クラスさま

株式会社ワン・パブリッシング(以下、ワンパブ)は、さまざまな企業のSDGsに関する取り組みとその活動を、インタビューを通して紹介しています。14回目は、個人・法人向けに家電・家具のサブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」を運営する株式会社クラスです。

同社は2018年創業で、企業理念は「“暮らす”を自由に、軽やかに」。家具と家電をはじめとしたインテリアを毎月定額で借りて、いつでも返すことができ、気に入ったらそのまま購入もできるサービスです。個人の利用だけではなく、企業のオフィスやコワーキングスペース、モデルルームやマンスリーマンションなどにおいても利用され、「自分らしさ」と「所有しない軽やかな暮らし」の両立や「失敗知らずの家具家電選び」を助けています。使い終えた製品はリペア・クリーニングして、次の利用者へ送り出すことで廃棄物の削減と脱炭素社会に貢献。循環型の取り組みは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に深く関わっています。代表取締役の久保裕丈さんに詳しいお話をうかがいました。

<プロフィール>

株式会社クラス 代表取締役社長 久保裕丈
2005年東京大学工学部卒業。2007年同大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年米系コンサルティング会社A.T. カーニー入社。2012年ミューズコー株式会社設立、2015年売却。2018年「”暮らす”を自由に、軽やかに」をビジョンに株式会社クラスを設立し、耐久消費財の循環型プラットフォームを運営。個人向け家具と家電のレンタル・サブスク「CLAS」、法人向けオフィス構築・移転「CLAS Biz」、不動産物件向け「CLASホームステージング」などを展開。商品を再活用し廃棄物を削減、脱炭素社会に貢献。サーキュラーエコノミーに寄与し、新たな社会インフラとなるべく、産官学連携で取り組んでいる。

創業の原点は「捨てること」への抵抗感

__サービス内容をうかがうと、まさしく「SDGs」そのもののような会社だと感じます。ただ創業時は、今ほど「SDGs」という言葉や考えが世に浸透していなかったのでは?

久保「そうですね。SDGsについては、多くの人が『なにそれ?』という時期だったのではないかなと。ただ私は創業時から『循環させ続ける』『捨てるをなくす』ということに、強い思いをもっていました。
今でこそ、私の自宅にある家具・家電のほぼ全てが自社サービスで借りられる製品になっていますが、かつては当たり前のように買い、使い勝手が悪くなってきたものや暮らしに合わなくなったものを、引っ越しのたびに捨てざるを得なかったんです。『返す』という選択肢がありませんでしたからね。
昨日まで部屋にあって、当たり前に使っていたはずのテーブルや椅子を、翌朝ゴミ捨て場に他の粗大ゴミと並べて置くことには強い抵抗がありました。

また起業家としても、『必要なものを必要な時に使い、不要になったら手放せる』という柔軟なサービスが欲しいと思っていました。ベンチャー企業は成長に伴ってオフィス環境が大きく変わりますから、備品を逐一買い続けていると資金的にも痛手なんです。まだ使える備品であっても、オフィスが手狭になったり、新しく機器を導入したりすると、置き場所に困って捨てるしかなくなる……なんてこともありますよね。
こうしたベンチャー特有の課題を解決したかったんです。『必要な家具・家電を一揃えできず、不便で困る。かといって、良くないものを妥協して買いたくない』というときに、このサービスがきっと役に立つはずです。従業員のエンゲージメントが高まる空間を作りながら、キャッシュフローもセーブできます。借りた物であれば、捨てる手間やコストもかかりません。

そういった体験談を踏まえ、創業当初から個人向けと法人向けの事業を両方手がけてきました。どちらからも求められるサービスだろうと確信していたからです」

__創業間もない頃から、複数の事業を同時に走らせていらっしゃったとはすごいですね! 目に見える成果はどのように出てきていますか?

久保「2025年2月時点で、累計11万件以上をリペア・クリーニングし、次のユーザーの手に送り出してきました。CLASがなければ捨てられていた可能性のある製品をよみがえらせ、再活用した実績だと思っています。

また、我々のサービスをご利用いただくと、従来の売り切り型ビジネスと比べて二酸化炭素(CO2)排出量36%削減、廃棄物発生量38%削減の効果が認められています。
出典:環境省「令和4年度デジタル技術を活用した脱炭素型2Rビジネス構築等促進に関する実証・検証委託業務 報告書」

ただ、数万人にご利用いただくだけでは、日本全体の脱炭素化(温室効果ガスの排出を抑止し、排出量実質ゼロを目指す取り組み)につながることはないとも思っています。数十万人、数百万人に使っていただいて初めて、そのインパクトが莫大なものになってくるでしょう」

「循環させやすさ」を重視した製品づくりも

__ユーザーとしては「SDGsらしい」アクションをしたつもりがなくても、貴社サービスを使うだけで脱炭素につながるのは良いですね。

久保「そうですね。脱炭素だけでなく、必要な資源量の削減にも寄与するサービスだと考えています。
諸外国の経済発展などの要因があり、現在世界では木材や金属、半導体に使うレアメタルといった資源が圧倒的に不足しています。リサイクルに注力したとしても、一定の歩留まりはあります。であれば、資源の消費量をどう抑えていくのかを考えることも大事だと思います。

一方で、自分は『使わない、作らないことが正義』だとは全く思っていません。ただCLASとしては不要なものを出さない、そして、限りある資源を使いすぎないという2点で世に貢献できればと。そのための取り組みとして、循環させやすい家具も展開しているんですよ」

__“循環させやすい家具”とは何でしょう。

久保「一言で言うと、『一定期間使用され、戻ってくることを見越して作っている』製品です。当社のプライベートブランド家具「CIRCLE」の製品は、いずれもそのように設計しています。
例としては、丸洗いができるマットレスなどがあります。この商品はフルカバーリングなので、カバーを変えて中を洗えば新品同様になりますから、次に使ってくださるお客様の満足度も高いです。

他には、組み立て式の家具も「循環型」を意識していますね。この商品は、設計の時点で「ビス打ちをしない」といった工夫を施しています。ビスを打ってしまうと、リペアやクリーニング時にバラせなかったり、バラせたとしても家具にダメージが残ってしまったりして、循環に適さないためです。ビス打ちするほうが製作コストを圧倒的に下げられるのですが、あえてそうせずにいます。

実は家具は、家電と異なりリサイクルに関する全国一律的な決まりがないのです。だからこそ、作った人間ができるだけ責任を持って循環させていくことが大事。リサイクルや再資源化も重要ですが、製品を製品のままきちんと使い続けていけば、歩留まり100%という理想的な状態になります」

挑むのは、“暮らしの文化を変える”試み

__久保社長は、大阪・関西万博で経済産業省が主催した「サーキュラーエコノミー研究所」のステージイベントに登壇されていました。会社やサービスが、政府からも認められている証だと思います。「持たずに使う」という利用行動は、広く一般に受け容れられてきている手ごたえはありますか?

久保「ありがたいことに、利用会員数は増え続けています。ですが、日本における認知度は恐らくまだ数パーセントなのではないかなと。目指しているのは“社会インフラ”だと認識してもらえるサービスになることなので、認知度を100%近くにしていかなければと思っています。

私は使っている家具や家電に愛着があるからこそ、手放した後にも責任を持ちたいという気持ちがあります。一方で使い勝手が悪くなってきたり、今の生活に合わなくなってきたりしたものを、愛着があるからと我慢して使う必要もないと思っています。だからこそ『手放したものを、ちゃんとよみがえらせる仕組み』をご用意して、『持たずに使う』、あるいは『借りてから買う』という選択肢もありますよ、と地道にお伝えしていきたいなと。

__私も数年前に引っ越したときは家具・家電をレンタルするという考えが浮かびませんでした……。 CLASを知っていれば違ったかもしれません。

久保「広告をあまり打っていないせいもあるかもしれません。単なるサービス提供ではなく、暮らしの文化を変える試みだと思っており、『捨てずに使う、巡らせる』という価値観を浸透させながら、じっくりと認知を広げていきたいと考えていますから。

CLASでは借りるだけでなく、使っていて『欲しい』と思ったら、お支払いいただいた月額利用料を差し引いたうえで購入もできるので、一般的な買い切りと比べてサービスが複雑です。限られた広告枠で『実質0円』『今なら無料』といった短い文字数でメリットを伝えようとすると誤解を招く恐れもあるんですよね。

__「暮らしの文化を変える試み」、素敵ですね。しかもユーザー側が何かを強いられることなく、サービスを利用するだけでSDGsにもつながるという。

久保「最近は、『使いやすい、何かを我慢する必要がない、しかも地球のためにも良い』という製品やサービスが増えています。例えば、100%リサイクルできる素材で作られた循環型のシューズなどが出てきていて、値段も他のシューズとそんなに変わらなかったりします。
『便利だなと思って使っていると、知らない間に世のためになっている』。皆さまにはぜひ、こういう選択肢を取っていただきたいです。

あとは、身近なことから興味を持ってみるのも良いかもしれません。私の場合は、ビジネスを始めて間もない頃に犬を飼ったことからSDGs意識がグッと高まりましたよ! 犬を散歩させているときに、どれだけのゴミが街に捨てられているのかということに気づき、本当に驚いたのです。

人間の暮らしによって、生態系や環境にはどうしても影響が出てしまうものです。それをゼロにすることはできませんが、できるだけ少なくする努力をしていかなければなりません。そのためにも自社サービスの認知度拡大と共に、事業において「製品の再生」にかかる工程をより強化したいです。特に捨てられると環境負荷が大きい製品は、すべからく当社のサービスで扱って“捨てる”をなくし、巡らせ続けたいですね。

企業情報

株式会社クラス。2018年に創業した、個人・法人向けに家電・家具のサブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」を運営する企業。家具と家電をはじめとしたインテリアを毎月定額で借り、いつでも返すことができ、気に入ったらそのまま購入もできる。使い終えた製品はリペア・クリーニングして、次の利用者へ送り出すことで廃棄物の削減と脱炭素社会に貢献している。