株式会社ワン・パブリッシングは、さまざまな企業のSDGsへの挑戦をインタビューで紹介しています。第16回は、食品包装関連の資材専門商社として国内トップクラスの規模を誇る合同会社折兼ホールディングスを訪ねました。
同社の取り扱いアイテムは40万点以上。なかでも今、もっとも力を入れているのが、さとうきびの搾りかすなどを再利用したエコ容器「バガス」製品です。なぜ老舗商社が「ごみ」から生まれる容器に未来を託したのか。マーケティング部の梅澤朋央さん、服部貞典さん、五味綾華さんに、その熱い想いを伺いました。
<プロフィール>
(写真・中央)
合同会社折兼ホールディングス 執行役員 マーケティング部部長 梅澤朋央
デジタルエージェンシー、エンターテイメント企業、外資ソフトウェアベンダーを経て2024年入社。折兼グループのマーケティング統括、デジタルビジネス統括、DX推進、ブランディングを担当。ESG視点からマテリアリティを再設定したのち、SDGs推進をグループの中核に据え、社会性と経済性の両立を目指し他業種含めた多様性のあるパートナーシップの構築を推進。
(写真・右)
合同会社折兼ホールディングス マーケティング部 SDGs推進グループ マネージャー 服部貞典
入社21年。通販事業の立ち上げから、営業企画部で展示会、カタログ、Webの制作・運営。
現在は、折兼グループのSDGsを推進。
(写真・左)
合同会社折兼ホールディングス マーケティング部 マーケティングG 五味綾華
コールセンター受託企業にてインサイドセールスの経験を経て、2025年4月に入社。
SFAツールの社内導入業務に従事した後、9月より現部署へ異動。広報担当としてSDGsへの取り組みを社内外に向け発信。イベント企画などにも携わる。
駅弁の「折箱」から始まった、140年の物語
__まずは、御社の歩みと現在の事業内容を教えてください。
服部「私たち折兼ホールディングスは明治20年創業、来年2027年で140周年を迎えます。国鉄の駅ができた当初、創業者の伊藤兼次郎が木材の端材で駅弁の折箱を作ったことが始まりです」
__折箱の「折」と兼次郎さんの「兼」で「折兼」という社名になったのですね!
五味「その通りです。その後、高度成長期を経て、プラスチック容器をはじめとする食品容器の販売を続けてきました。取引先はスーパーマーケット、食品メーカー、外食チェーン店です。主軸となる食品容器だけでなく、衛生資材やフィルム、備品などの販売も行っています」
__そんななかで、なぜエコ容器に着目したのでしょうか。
梅澤「きっかけは約10年前、現社長の伊藤崇雄が、海釣りで『自社で扱っているようなビニール袋』を釣り上げた衝撃でした。自分の会社の商品が海洋ごみ問題に思いきり加担しているのではないか、会社をあげてフードビジネスの環境を変えていかなくては! と考えたことが始まりです。
その後、グループ会社である『パックスタイル』で本格的に環境に配慮した商品の開発を始め、さまざまなリサーチと試行錯誤の末にたどり着いたのが、現在私たちが力を入れている『バガス』です」
100%生分解。地球の未来を「バガス」が変える
__「バガス」とは、具体的にどのような素材なのですか?
服部「『バガス』はフランス語由来の英語で、『さとうきびの絞りかす』を意味します。砂糖を作った後のさとうきびは、燃料や紙の原料として再利用されていますが、余ったものは捨てられている現状があります。その捨てられるはずのバガスと、同じく廃棄される予定の竹や麦を原料として誕生したのが、バガス容器です」
五味「最大の特徴は、『パックスタイル』が提供する製品の生分解(土の中や海中の微生物によって分解され、最終的に二酸化炭素と水になって自然界に還ること)が100%であることです。2020年10月の北九州市立大学との共同研究により、土中に埋めたバガス容器は76日、海洋では156日、コンポストでは1日で分解されることが確認できています。
さらに、原料に石油を使用していないので二酸化炭素の排出量を削減(※)することができ、地球温暖化防止にも寄与できるのもメリットです」
※バージンプラスチックと比較して、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点で81%のCO2削減できることが証明されています
__まさにSDGsという素晴らしい素材ですね! 普及の手ごたえはいかがでしょうか。
服部「直近3年間の平均増加率は240%です。コロナ禍でテイクアウトの需要が増えたことも追い風となりました。どの自治体においても可燃ごみとして捨てられることも、普及に一役買ったのだと思います。
プラスチック容器に比べて値段が高く、導入のハードルが高いと思っていたバガスが受け入れられたという事実は、弊社のSDGs活動を後押しする大きな契機となりました」
梅澤「今後のバガス容器は、さらに進化していく予定です。独自に土壌分析をしていて、バガスを分解した土で作られた野菜の安全性もエビデンスが取れていますが、国際認証の取得は今後の発展に欠かせません。さらに成分を追求して、世界的にも認められる食品容器を作っていきます」
「捨てられるもの」から「体験」へ。目指すは「スイミー」の団結力
__非常に順調に見えますが、何か課題はありますか。
梅澤「それが山積みです(苦笑)。200%増と言っても母数が非常に小さいですし、社会的な認知度はまだまだ。バガスを知ってくれた人には『環境に良い』『素晴らしい製品だ』と評価していただけるのですが、そこからなかなか広がっていかないんですよ。
その理由は明確です。いくら環境に良くても、『ワクワク』が足りないから。自分が楽しいと感じたものでないと、人は誰かに話したいと思いませんよね」
__その「ワクワク」をどう作っていくのでしょうか。
梅澤「たとえば、名古屋で開催される『循環フェス』への参画です。古着の回収やリサイクルを体験できるイベントなのですが、ここのマルシェでバガス容器を使ってもらいます。さらに、来場者がバガス容器を持って『おしゃピク(おしゃれなピクニック)』を楽しめるSpiral Picnic Clubレンタルセットも企画しています」
五味「Z世代を中心に、写真映えは欠かせない要素です。バガス容器は色味や風合いがナチュラルで、エコが伝わりやすいうえに、見た目もおしゃれ。若い世代が『この容器、かわいいしエコだね』とSNSで発信してくれることで、自然とエコの輪が広がっていくといいなと思っています」
梅澤「to B向けの施策としては、既存のブランド『weeco(ウィーコ)』を軸にさらなる発展を企画しています。ただ、そこでも『容器』をカタログ的に訴求するのではなく、その先にある『豊かなライフスタイル』を提案したい。あくまでも人が中心で、その周りに容器や資材がある。私たちの思い描く『環境にも配慮したライフスタイル』を、いかにワクワクする形でお見せしていくかを考えています」
__社会実装に向けて、回収インフラの整備も重要になりますね。
服部「そこが最大の壁です。自治体を越えた回収の難しさなど課題は多いですが、すでに『バガスフードサイクリング』の取り組みで、農林水産省から『サステナアワード2025』優秀賞をいただきました」
五味「これからは、ごみ収集業者や自治体、スタートアップを巻き込んで、いかに社会課題を解決しながら実装できるスキームを作るか? に取り組んでいきたいと思っています」
__最後に、折兼グループが目指す未来を教えてください。
梅澤「食品容器=『捨てられるもの』という常識を変えたいですね。パッケージって、消費者とのコミュニケーションツールでもあると思うんですよ。そこに情緒的価値があることを、我々は再認識していかないといけない。
しっかり安全に、おいしい食品を生活者に届ける。そしてその機能を絶やさず提供しつづけること、そして安く。今まで通りの包装資材の価値にプラスαの価値を生み出したいと思っています。
一社では限界があっても、志を同じくする仲間が集まれば、絵本の『スイミー』(一匹だけ黒い小さな魚スイミーが、知恵と勇気で赤い小魚の兄弟たちと力を合わせ、巨大な魚のふりをして海を泳ぐ物語)のように大きな力になれるはず。
バガスを選ぶことが、若い世代には『おもしろい選択』、大人には『賢い選択』だと思ってもらうことが第一歩です。そしてゆくゆくは『当たり前の選択』になる未来を目指して、私たちの挑戦は続きます」
企業情報
名古屋に本社を置く、食品包装資材の国内トップクラス専門商社グループ。2016年10月にホールディングス化。「食の安全・安心を守り、豊かな食文化と持続可能な社会をつくる」をミッションに、フードビジネスのプロとして、さまざまな分野で専門性を発揮、顧客や社会に貢献できるグループを目指す。