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さまざまな企業のSDGs活動

認定NPO法人キッズドアさま

【認定NPO法人キッズドアとSDGs】ひとり親の2人に1人が貧困という現実。貧困の連鎖を断ち切り、どんな子どもでも夢や希望を持てる社会を目指して

認定NPO法人キッズドアさま

株式会社ワン・パブリッシング(以下、ワンパブ)は、さまざまな企業・団体のSDGsに関する取り組みとその活動を紹介しています。10回目は、2021年に認定NPO法人となったキッズドア。キッズドアは、全国84カ所の教室で約2000人の学びたくても学べない子どもたちに、無料の学習教室や体験活動を提供するなどの支援を続けている団体です。ワンパブが発行する時計専門メディア『WATCHINAVI』では、売り上げの一部をキッズドアへ寄付し、継続的な支援を続けています。

2021年時点で日本の子ども(17歳以下)の貧困率は11.5%といわれ、前回調査時より改善しているものの8.7人に1人が貧困。その中でも、ひとり親世帯の貧困は44.5%と深刻で、コロナ禍や物価高騰によってその状況はさらに悪化しているという事実があります。このような環境下で、キッズドアはどのような取り組みで子どもたちをサポートしているのでしょうか? 今回は、キッズドア専務理事を務める福田雄彦さんにお話を伺いました。

<プロフィール>
認定NPO法人キッズドア 専務理事 福田 雄彦
外資系金融在職中の2015年にNPO法人キッズドアの活動に出会い、翌年より自らも学習支援ボランティアとしてたくさんの子どもたちと関わるように。2019年には勤めていた企業を早期退職し、キッズドアの非常勤監事に就任、2021年には専務理事に就任した。専務理事に就任して以降は、中期活動計画策定、人事制度の刷新、ガバナンスの強化、内部統制強化を推進している。

子どもたちが進学を諦めないために

-まずは、キッズドアさんの活動内容について、どのようなことをされているか教えてください。

「私たちは『すべての子どもが夢や希望を持てる社会へ』を掲げ、大きく5つの活動に取り組んでいます。1つ目が、設立当時から続けている学習支援です。家庭環境によって学ぶことを諦めてしまうようなお子さんが、ここに来れば勉強できる…そんな安心できる学習会や居場所を提供しています。2つ目の柱は体験活動やキャリア教育。生活困窮家庭のお子さんは学習機会だけでなく美術鑑賞やスポーツ観戦などの「体験機会」もほとんどないのが実情です。イベントや体験学習への参加は、「将来どんな大人になりたいか」と考えるきっかけになる大切なもの。この機会を私たちは提供しています。これら2つの活動は、1300人以上いるボランティアの方々の支援によって成り立っています。ボランティアにはオンラインを通じて海外から参加される方もいらっしゃいます」

-学習支援・居場所支援だけでなく、子どもたちの体験活動やキャリア支援も行っているんですね。残り3つの活動についても教えてください。

「3つ目が、全国の困窮子育て家庭にご登録いただき、食料や文房具といったものを送る物資支援、政府・自治体または民間の行う支援や助成情報をわかりやすくお伝えする等の情報支援、主に子育て中のシングルマザーの方々に、資格取得等をお手伝いすることで非正規から正規雇用への転換や、より所得の高い仕事への転職を図っていただく就労支援、これらを行う「ファミリーサポート」事業です。現在、3000世帯近くがこの支援事業にご登録下さっています。4つ目はキッズドアにつながっていただいているご家庭を対象に調査を実施、困窮子育て家庭の現状をお伝えする調査広報活動です。例えば、今年6月に発表した『2023夏 物価高騰に係る緊急アンケートレポート』では、1538件の調査回答をいただきました。その中には、「節電のためエアコンも扇風機もつけていない」「1食あたり110円以下にしている」「生活費が手一杯で部活の用具を買い替えてあげられない」など、深刻な叫びが綴られています。こうした困窮子育て家庭のリアルな声・実情を、多くの方に知っていただく活動を行っています。そして最後が、私たちの活動のノウハウを他団体ともシェアし、子どもたちへの支援活動の輪をより多くの地域に広げていく取り組みです。」

『2023夏 物価高騰に係る緊急アンケートレポート』より

 

-活動を多くの人に知ってもらうことも大切ですよね。では、キッズドアさんの軸となっている学習支援について、詳しく教えていただけますか?

「学習支援には、行政から委託されている委託事業と、個別に行う自主事業の2種類があります。行政から委託されているものは、自治体の施策として行うもので、支援活動内容は自治体との協議で決められます。自主事業は文字通り、キッズドアが独自で行うものです。オリジナルの英語教材などを活用したテーラーメイドの学習支援、体験型学習と組み合わせた支援等、お子さんごとの特性やニーズにあった組み合わせで実施しています」

-いずれも無料とのことですが、どのような仕組みで運営されているのでしょうか?

「勉強を教える大人たちは、研修を受けたボランティアが担当しています。現役の大学生から、退職した年配の方まで幅広い方々が関わっていますよ。委託事業は行政からの委託金で、自主事業は企業や支援者の方からいただいた寄付金で運営しています」

-どんな子どもたちが学習支援を受けているのでしょうか?

「一概に“こういう子”とは言いにくいのですが、経済的理由で十分な学習機会を得られていない小学生から高校生までが対象です。最近は高校生支援に力を入れています。『うちは貧乏だから大学にはいけない』『下に兄弟がいるから、就職して家庭を支える』と大学進学を諦めてしまう高校生がいます。実力はあるのに、進学できない。学びたいのに、学べない。家庭環境によって夢を諦めてしまう、そんな子どもたちを一人でも減らしたいと思っています。2021年6月には医療系大学・専門学校への進学を支援する取り組みもはじめました。昨年は、医学部も含め124名の生徒が大学・短大・専門学校へ進学しました」

日本にも貧困がある、その事実を受け入れる

-貧困と聞くと、どこか遠い国のことのように思えてしまうのですが、日本における貧困にはどんな課題があるのでしょうか?

「最近ようやくメディアでも取り上げられるようになりましたが、“日本に貧困はない”と思われているのが一番の課題です。現在の日本は、8.7人に1人のお子さんが貧困と言われています。しかし学校の中を見渡してみてもみんながスマホを持っているし、そこそこ綺麗な格好をしているし、貧困には見えない…そんなお子さんが多いんですよね。けれど、その裏ではいろいろな犠牲を払っているんです。家に帰っても満足な食事はできず、暑い日でもエアコンは付けず、勉強なんかできたもんじゃない。世帯年収は200万円程度、親も仕事を掛け持ちして生きるだけで精一杯の本当に苦しい生活で、出費の中で何を削るか…そんなことを常に考えている人たちがいるんです」

-胸が痛いです…。

「貧困家庭の場合、孤独や孤立も大きな課題です。キッズドアでは、学習支援に加えて、先ほどお話しした「ファミリーサポート」で食料支援や情報支援も行っています。現在3000世帯ほどの家庭と繋がっていますが、全国にはまだまだ厳しい家庭がたくさんあります。さまざまな支援情報を提供することで、キッズドアと繋がったことで命が助かった、生きていけた、そんな声もいただいています。我々が支援している子どもの家庭では、ほとんどの親御さんは一生懸命に働いています。貧困は、コロナ等で収入が途絶えたり、病気で働けなくなったり、まさに災害という一面があります。なりたくてなるものではないんです」

-SDGsには「1.貧困をなくそう」「4.質の高い教育をみんなに」がありますよね。これらを達成するために、私たちは何をしたらいいのでしょうか?

「まずは、経済的困窮で苦しんでいる子育て家庭が日本に存在する、家庭の環境によって十分な教育の機会を得られていない子どもたちがいる、まだまだフェアな世の中ではない、その事実を知ること、そして自分ごととして事実に向き合うことが第一歩ではないでしょうか。本当に少しずつですが、ここ数年でこども家庭庁が新設されたり、政府の認知が広がったり、企業からの支援も増えてきました。日本に貧困がある状況にただ驚くだけではなく、何かできることがないか考えていくことが大切だと思います」

-驚いて終わりではなく、事実を知ったからには行動できるようになりたいですね。

「本当に小さなことでもいいんです。キッズドアでは、charibon(チャリボン)の活動にも参加しています。charibonとは、寄付者から読み終わった本を集めて換金し、そのお金を指定したNPOや学校、自治体へ寄付できるものです。いらなくなった本を捨てるのではなく、charibonに送ることでキッズドアの活動を支える資金に変わります。また、毎月一定額、1,000円からの寄付支援をいただくマンスリーサポーターや、我々と一緒に子どもたちを直接支援するボランティアの募集もしています。ボランティアと聞くとすごく大変なことに感じるかもしれませんが、月に一度だけボランティアとして中学生に英数国の勉強をお手伝いいただく方もいらっしゃいます。できることから始めてもらいたいですね」

子どもの未来を奪うような大人にはならない

-学習支援から始まったキッズドアさんですが、今は困窮子育て家庭の支援へと活動の幅が広がっているように感じました。この夏には生活に困窮している2700世帯へ無料で食料を届けるためのクラウドファンディングも実施されていましたね。

「コロナ禍で、食べられていない子どもたちがいる現状を知ったことが、食料支援を実施することになったきっかけです。夏休み中にどんどん痩せていく子どもたちを目の当たりにし、2020年からファミリーサポートを始めました。これまでに延べ31万人以上に食料・物資支援や就労支援、情報サポートを行いました。昨年もたくさんの感謝の声をいただいたので、今年も引き続き実施しています。食料支援は、食べ物を支援するだけでなく子どもたちの心のサポートにも繋がります。継続的な支援ができるようにと考えています」

(食料支援で届いたハガキの写真)


-コロナ禍で、今まで見えていなかった貧困による新たな課題も見えてきたのですね。

「親の貧困は、十分な教育機会を奪うことで子ども世代に連鎖する、これは事実としてあります。しかし、そこから抜け出したいと願う子ども達にフェアなチャンスを与えられないのは大人の責任ではないでしょうか? どんな子どもでも夢を持っていい、希望を持っていい、挑戦できるチャンスはある。そんなフェアな世の中を大人たちが作っていかなければいけませんね」

-どんな境遇だったとしても、子どもたちが夢や希望を持つのが当たり前の世の中にしていきたいですね。

「例えば、大学を受験したいけど受験方法や受験対策がわからないとか、合格したのに入学金が払えないとか、面接に着ていくスーツがないとか、夢に向かう背中を誰にも押してもらえない子もいるんです。入学金は、大学に相談すれば少し遅らせてくれる可能性だってあるかもしれないし、スーツはキッズドアのボランティアが貸してくれる、子どもたちに『夢を持っていいんだよ』と諦めない気持ちを知ってもらいたいです」

あたたかい心が広がり、サポートすることが当たり前の世の中へ

-最後にこれからの目標を教えてください。

「この活動をコツコツと続けていきながら、子どもたちと向かい合い、夢や希望を叶えるお手伝いをすることは、引き続き取り組んでいきたいです。昨今、キッズドアは新しいステージに来ていると感じています。これからは、自分の団体だけで手の届く子供たちだけに支援するのではなく、同じような志や想いを持った人たちとともに、支援の輪を広げていくことがより大切だと考えています。キッズドアにくる子どもたちだけでなく、日本中にいる貧困に苦しむ子どもたちを救えるような社会の仕組みをつくっていきたいです」

-キッズドアさんが全国の支援団体や個人を支援するということでしょうか?

「そうですね。キッズドアはオンラインを使って全国の子ども達とつながってきてはいますが、キッズドアの拠点のある場所以外にも、対面で紙と鉛筆を使った学習支援を必要としている子どもたちはたくさんいます。その地方地方にいる心ある人たちと協力しながら、支援の輪を広げていくことで全国をサポートできると考えています。しかしそこには人材と資金が必要です。私たちが人材を育て、資金を集めて、横のつながりで支援していくことができれば、日本中の子どもたちを網羅的に支えることができるはずです。そこにはもちろんボランティアさんの協力、企業さんの寄付、地域の理解などさまざまなハードルがありますが、子どもたちの未来を支えるあたたかいコミュニティが増えるといいと願っています」

企業情報

2009年設立以来、日本の子どもの貧困課題の解決に取り組んでいる。困窮家庭の小学生〜高校生・高校を中退した若者などを対象に、「無料学習会」や勉強に加えて食事等の生活支援も行う「居場所型学習会」を東京・宮城で展開。理事長の渡辺由美子は、内閣府こども家庭庁こども家庭審議会こどもの貧困対策・ひとり家庭支援部会臨時委員等、政府委員も務めている。